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第9期運用報告書が届きました。サブプライム問題による信用収縮で、ファンド資産も手痛い打撃を被りましたが、将来を見据えて投資戦略を練っているようです。今後の運用方針では、「消費者に選ばれる企業」で構成された純度の高いポートフォリオを実現するとされていました。これがどのような企業なのか、第9期の主要な買付銘柄を見ると、このようになっています。
トヨタ自動車、コマツ、シャープ、花王、テルモ、クボタ、武田薬品、ユニ・チャーム、デンソー、新日本製鐵
各市場で高いシェアを握り、かつ収益力も高い企業ばかりです。これらは、現在の上位組入銘柄に顔を出していると思います。投資の基本は、誰も知らない大穴の企業を当てることではなく、誰もが知っている本命の企業を安く手に入れることだ、ということでしょう。その意味で、どちらかというと穴馬に近い企業を売って、資金を本命に集中しているということだと思います。
また、投資の基本方針では、「円高に大きく振れた時などは、世界経済全般のファンダメンタルズ分析をベースに、各国の景気サイクルのズレにも投資チャンスを積極的に求める考えです。」とされていました。
外国株式にも投資できる設計になっていることは知っていましたが、今後、アメリカ経済の低迷を受けてドルと米国株が売られる局面が出てくると、安く売り叩かれたアメリカの優良企業を買うことがあるのかもしれません。その際、どのような企業がポートフォリオに加わるのかは、興味をひかれます。
インフレ・原油高から、さわかみファンドがテーマにしていると思われる「環境」関連に株式市場の目が向き始めています。なかでも電池銘柄は最近の物色のテーマになっているようで、古河電池、ジーエス・ユアサといった銘柄に、未だ業績の裏付けがないにも関わらず資金が流入しています。
ジーエス・ユアサはさわかみファンドの組入銘柄だと記憶していたので、5月30日と6月13日の運用状況を見てみました。すると案の定、少しずつ売り上がっている様子がうかがえました。240万株から190万株へと、保有株数が減少しています。
こちらは「ごめんなさい売り」ではなく、「ありがとう売り」でしょう。こんなに高値で買い取ってもらって、「ありがとう」ということだと思います。なぜなら、さわかみファンドは単に株価が上がったというだけで売るような真似はしないからです。株価が上がっても、それが業績に裏付けられたものであれば、きちんと保有を続けています。これは、住友金属工業という銘柄を見れば一目瞭然です。同社の株価はコストの8倍にも達していますが、ずっと保有株数は変わっていません。
ジーエス・ユアサの場合、今後に電池の需要増があり業績が急拡大する可能性もありますが、今のところは単なる期待感で買われているだけであり、経済的な裏付けはないということでしょう。もっとも、ここがさわかみファンドの強かなところですが、全ての保有株を一気に売るような真似もしていません。静かに少しずつ売り上がっているだけです。これで近い将来、業績の裏付けができてきたとしても、残った保有株式がそれを反映してくれます。どう転ぶか分からない将来をにらみながら、どちらに転んでも良いような運用をしているようですね。
ようやく最悪期を脱したと言われるようになってきました。といっても、米国の著名投資家が警鐘を鳴らしており、景気悪化の可能性はくすぶっているのでしょう。仮に悪化するようなら、またしても買いのチャンス到来。目先の株価を追って右往左往する人たちを尻目に、ありがとう、ありがとうと買っておけばいいと思います。
さわかみファンドの上位組入銘柄も、随分と様変わりしてきました。新興国、環境、優れた経営成績といった投資テーマが浮かんできそうです。中には、経営者の威勢がよすぎて、発言について批判を受けた企業もありますが、御愛嬌でしょう。
組入銘柄のチェックは、やっておくと外出した時に楽しくなります。そこかしこに自分のお金が働いた痕跡が見つかるからです。
道路には、トヨタ、ホンダ、スズキの車。家電量販店に行けば、パナソニック(松下電器産業)やシャープ、ソニー、東芝の製品。デジタルカメラ売り場には、キヤノン、ニコン、ペンタックス(HOYA)。タイヤを見れば、ブリヂストン。建設現場の建機は、コマツ。道路沿いには、セブンイレブン(7&iHD)。
そして、これらの企業に素材を提供する新日鉄や東レといった企業があり、素材をつくるための原料や生産品を運ぶ商船三井のような企業があります。その船を造るのは、三井造船。ここに、また素材メーカー等が関与します。
全てさわかみファンドの組入銘柄であり、自分たちはさわかみファンドを通じて、それらの企業のオーナーになっているようなものです。製品を買ってくれる人、サービスを利用してくれる人、会社に勤めて頑張って働いてくれている人。いろんな人に、感謝の気持ちでいっぱいになります。
安くなっているのだから買っておこう。いつもファンドレポートで繰り返される澤上さんのアドバイスですが、実際に行うのは心理的に難しいです。株価が上がっている時には「まだまだ上がりそうだ」、言い換えると「下がりそうにない」という意識が働き、心理が「買おう」という方に傾きます。
ところが、一度株価が下がり出すと「まだまだ下がりそうだ」、「上がり始めるまで待とう」といった心理状態になります。その結果、買えずにいる間に株価が上昇を始めます。この頃は、まだまだ疑心暗鬼です。「また下がるかもしれない」「もうちょっと待ってみよう」といった心理状態でしょう。何より、少し前まで素晴らしい安値で買えたわけですから、「底値で買いたい」という意識も手伝って、やはり買えません。
そうこうしているうちに、安心感が広がり誰もが市場に参加できる雰囲気が広がってきます。もう待っていられません。皆が買っているのですから、乗り遅れるわけにはいきません。そして飛びついた時は、既に高い値段となっています。
悲観一色になったとき、不透明感が漂っているときが絶好の買い場。よく肝に銘じておかないといけませんね。
まだ暴落の最中ですが、さわかみファンドは将来を見据えて少しずつ集中投資へと舵をきっているようです。07年12月28日のレポートと08年3月31日のレポートを比較すると、組入銘柄数が328銘柄から310銘柄へと減少しています。レポートでも「ごめんなさい売り」を出しているとの報告がありました。景気後退から景気回復となった時、素早い回復を遂げるであろう経営力の強い会社へ資金を移しているのでしょう。実際、07年12月28日の上位組入銘柄は、保有株数の増加しているケースがほとんどです。
上位組入銘柄以外では、島津製作所(15万株から75万株)、商船三井(38万4千株から80万株)、ニコン(9万5千株から19万株)、全日本空輸(90万株から180万株)、日本医療事務センター(40万株から90万株)、トクヤマ(29万株から52万株)、安川電機(25万株から42万株)、テルモ(11万5千株から22万株)といった銘柄が、3ヶ月の間に大きく買増しされています。このうちニコンは一時、売りに回っていたはずですが、大きな下落の機会を捉えて安値で買い戻しています。このあたり、抜け目なく立ち回っていることがうかがえます。
逆に、売りに出されているのは、どのような銘柄なのでしょうか。簡単に目を通しただけなので見落としているかもしれませんが、以下の銘柄が気になりました。
まず完全に売却したと思われる銘柄として、京セラ、オリックス、NEC、パイオニア、北越製紙、住生活グループ、綜合警備保障などがあげられます。また大幅に保有株数が減少した銘柄として、富士通(300万株から160万株)、富士重工業(255万株から90万株)、オートバックスセブン(17万株から10万株)といった銘柄が目に止まりました。
このうちオリックスについては、以前からさわかみファンドに組み入れられていることを不思議に感じていたのですが、ここでお別れとなったようです。レンタル事業について将来性を感じていたこともあったのでしょうが、同社の事業はお金のレンタルの方に行ってしまい、さわかみファンドがあまり好きではない金融業の色彩が強くなっています。運用の真意は知る由もありませんが、こういったことも影響したのかもしれません。
他の銘柄についても、競争力が弱いと感じられる企業や、事業内容や経営状態から経営成績の好転に時間がかかると思われる企業の保有株数を減らしたのでしょう。京セラやNECについては、全株売却は不思議な感じもしますが、以上のような理由があるのだと思います。この保有銘柄の組み替えが、今後どのように影響してくるでしょうか。





